剥落止めとは現状を後世に残す為の作業です。
漆や彩色の塗膜は年月の経過と共に劣化し接着力が弱まり、剥離・剥落が進みます。その塗膜に接着剤(膠や漆、樹脂など)を足し戻して再接着と強化を行います。
一般的に漆塗や彩色の剥落止めには元々使われている同じ素材(漆や膠、布海苔などの天然由来の接着剤)を使用します。塗り重ねられた塗装面同士や塗装面と支持体の間といった剥離箇所に接着剤を差し込み、または浸透させる作業となるため、塗装を理解し劣化の状態を観察して、何処までどの程度の剥落止めをするかの慎重な調査検討と適切な材料や技法を選択する必要があります。
建造物塗装の剥落止めは柱や壁などの立面や天井などの逆さ面が主であり、長期間に渡る環境によってその塗装面の状態は様々であるため、新しい接着剤が強過ぎて塗膜を引っ張り、かえって悪化させることのない様に注意、工夫が欠かせません。
また、以前には樹脂による剥落止めが盛んに行われた時期があり、その場合、樹脂を再度使うか、或いは樹脂を除去してから伝統技法に戻すかを検討する必要もあります。そのため彩色に関する知識やプロセスを理解することが不可欠と判断して、彩色部門の中に専門チームを設けています。
現状維持を基本と考える建造物彩色において、剥落止め~補筆~復元(現状図や復元図)の分野はこれからも重要な保存修復技術として発展していくものと思われます。