国宝

日光東照宮(陽明門)

にっこうとうしょうぐう ようめいもん

所在地:栃木県日光市山内

工事名称:日光東照宮 陽明門 塗装工事

工期:2013年7月19日~2017年3月24日

漆塗 彩色

日光東照宮は1617年(元和3年)、徳川幕府初代将軍家康公を「東照大権現」としてお祀りした神社です。その中でも特に美しく飾られた陽明門は、いつまで見ていても見飽きないところから別名「日暮の門」とも呼ばれています。故事逸話や子供の遊び、聖人賢人など500以上の彫刻がほどこされた、東照宮の代名詞ともいえる建造物です。

江戸初期の1636年(寛永13年)大造替以後、大小合わせ約20回の修理が行われている陽明門。今回は平成の大修理として2013年~2017年(平成25年度~28年度)までの4ヶ年度にわたり施工されました。

豪華絢爛の象徴とされる陽明門も前回修理から40年の時が刻まれたことにより、漆塗は艶を失い退色、粉化が進行し下地層が露出してる箇所もありました。彩色範囲も経年による膠の劣化から塗膜の剥落が進み、激しい風雨に耐えられない箇所も見受けられました。修理に当たり、公益財団法人日光社寺文化財保存会設計監理の下、漆塗・彩色の施工範囲を保存会直営と区分し請け負いました。

漆塗は、旧塗膜が堅牢な箇所は無理な叩き落としを控え、出来る限り残すことに努め損傷や環境に応じ、細かく使用を分けた施工としました。見どころの1つでもある黒漆と金箔が映える斗栱廻りは、何十工程を経た黒漆塗が終わった後に「漆箔押」という金箔を漆で貼る工程があります。施工中、漆黒の空間に金箔が押されていく様は圧巻でした。

彩色は大きく分けると6種類の彩色技法が施されており、彩色下地には漆下地を施した上に着彩していることも大きな特徴です。また、彫刻に多くみられる日光特有の施工方法「生彩色」は彩色工程に至るまでに【漆による木部補修→漆下地→漆塗→金箔押→着彩】を施します。通常の膠彩色は【木地の上に礬砂引き→胡粉下塗→着彩】であるのに対し、漆塗の数十工程分の手間が多く必要です。しかも、この漆塗は彩色の下に隠れ、目で見ることが出来ません。経年劣化で彩色層が落ちても下地の金箔が現れ、美観が保たれるとも言われています。

この工程数や材料、技法で彩れた陽明門は、世界中の人々を出迎える門としてまさに相応しく、息つく間もない装飾をご堪能いただけます。

詳細は【小西美術工藝社通信Vol.13】にも掲載しております

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