いずさんじんじゃ
所在地:静岡県熱海市伊豆山708-1
工事名称:伊豆山神社 拝殿 向拝、彫刻彩色、錺金具工事
工期:2012年3月30日~2012年9月19日
「伊豆山神社」は熱海駅より東北に約1.5 キロ、海抜約170 メートルに位置し、その境内からは伊豆の海と相模灘を一望することができます。古くは伊豆大権現、走湯大権現とも称され、明治に現在の社名へと改称されました。
平安期の頃から霊験所として知られ、源頼朝の挙兵を助け、源平合戦の際には北条政子が身を寄せていました。また、戦国時代には小田原の北条氏による庇護を受け、そのために秀吉の小田原征伐で焼き討ちに遭い、社殿は焼失します。しかし、徳川政権期に再建・復興され、新社殿は江戸期の名彫師「波の伊八」の彫刻で飾られました。その後1928年(昭和3年)には昭和天皇御大典に際して国幣小社(こくへいしょうしゃ)に列格仰出。1936年(昭和11年)に彫刻など江戸期社殿の部材を一部再用し、本殿、拝殿、神饌(しんせん)所、雷電社、手水舎などが当時の内務省の手により整備されて、現在の社殿の姿に至ります。
今回の工事では向拝虹梁上(こうはいこうりょううえ)龍彫刻、「波の伊八」作の犀(さい)彫刻、大瓶束(たいへいづか)鯉の滝登り彫刻、唐破風(からはふ)兎毛通し(うのけどおし)菊彫刻、そして唐破風の錺金具の補修を手掛けました。
波を彫らせると右に出る者はいない、として畏れられた「波の伊八」の作品に色が施された例はあまり見つかっていませんが、取り外した彫刻に彩色絵具が残っていたことから、今回は痕跡資料を基にした彩色の復原を行いました。
表面の金箔や墨の多くが失われ、緑青錆(ろくしょうさび)も発生していた錺金具は、煮洗い、歪みや破損部の調整、表面の金箔押、墨差しという工程を経て、金と黒のコントラストが鮮やかな姿へと蘇りました。
伊八によって産み出された繊細かつ躍動感あふれる彫刻に対峙し、その豊かな表現と高い完成度を損ねることのないよう、職人一同、精いっぱい作業にあたりました。