ようとくいんたまや ずいがんじかんり
所在地:宮城県松島郡松島町町内
工事名称:陽徳院霊屋 保存修理工事
工期:2006年8月~2008年12月
「陽徳院霊屋」は、国宝の御本堂・庫裡(くり)を有する「瑞巌寺」の境内北側、境内地の中でも一番高い場所に鎮座する、9尺間宝形造の御霊屋です。伊達政宗公の正室、愛姫の墓堂で、1660年(万治3 年(1660 年)に建立されました。
約350年以上という時の経過で、特に彩色の剥落や錺金具の欠失が著しく、今回の工事では加飾の漆塗・彩色・錺金具を施工しました。建立当初の状態が維持されてきたことで残った、部材の重なりあう部分や僅かな痕跡、風化の形状などを確認し、資料と照らし合わせながら、復原の根拠を手繰るようにして集めました。
復原工事により御霊屋外部は黒漆塗で仕上げられ、隅や散らしに配された多くの錺金具も以前の輝きを取り戻しました。
また、台輪より上は隙の無い極彩色が施されており、荘厳さを表しながらも落ち着いた仕上がりとなりました。
内部は金箔押(漆箔)が施され、その上に獅子や草花の彩色が煌びやかに描かれています。また、御霊屋は金色の配置が絶妙であり、特に建物正面向拝部分は象徴的な箇所として、その高い意匠性が評価されています。
錺金具は、軒回りが金箔押(漆箔)、胴回りから下を水銀鍍金で仕上げています。軒桁への彩色による金箔押(膠箔)、虹梁への漆塗による金箔押(漆箔)、向拝柱への水銀箔押の頭巻金具取り付けと、近接した部位に多様な工法が使われており、「永遠の象徴」でもある金に対してのこだわりが見られます。当時の各職が、それぞれの技量を競い合ったと思われます。