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チャン塗・密陀彩色

漆塗の代替塗装仕様として18世紀初頭以降に全国に普及したと考えられる技法に 「チャン塗」があります。
渡来技術であることから、現地の呼び方を採用して、
または「父ちゃん母ちゃんでも塗れる」からチャン塗―と
その呼称の由来は定かではありませんが、植物性の油を固着剤として塗料に用いる技法です。


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    乾性油と松脂を混合してチャン油を作る

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    チャン油と松煙墨を合わせて練る

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    密陀油に顔料を練り合わせる

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    日光東照宮 透塀 上下長押 亀甲花菱紋(密陀油彩色)

植物性油には乾性油(固まる性質のある油)である荏胡麻油、桐油などが用いられ、これらに松脂を混合したものは「チャン油」、一酸化鉛を入れたものは「密陀(僧)油」となり、こうして作った油で顔料などを練って彩色をしたものを「密陀彩色」、「桐油彩色」と呼びます。

解説書などに記述される油の煮詰め方は様々で、中温(約100~180℃)で1時間から5時間ほど煮て水分を飛ばし、一酸化鉛を入れてから高温(約200~350℃)で更に煮る、といったところが一般的ですが、その温度や時間、数量は一定ではありません。中には唐辛子や木綿を焼いた灰を入れるとした作り方を説くものもあります。松脂を入れることで艶と厚みのある塗装となり、同時に耐水性や平滑面(金箔)での剥落のしにくさなどが期待されます。当社では施工の度に乾性油を煮炊きして作り、数々の文化財修理の実績からノウハウや配合比等のデータを蓄積しています。

昔の塗装屋さんは朝出掛ける前にその日の天候に合わせて油を煮たという話しもあり、そうすると塗るのはともかく乾性油を作るのは「父ちゃん母ちゃんでも・・・」というほど簡単では無いように思われます。

建造物で塗装の調査をしていると銅板屋根等に残る塗装片や、木地に直に塗っている漆塗様の塗装が時々見られます。これらの多くはチャン塗だった可能性もあり、漆の代用とも見られがちですが油性塗料として案外広く活用されていたのかも知れません。

これらの油を使った文化財修理の例は日光にもあり、平成23年に竣工した日光東照宮本殿、拝殿を囲む透塀の上下長押に描かれた亀甲花菱が密陀彩色(桐油彩色)によるもので、創建当初の輝きを間近に見ることが出来ます。

また先頃、国宝に指定されました埼玉県熊谷市妻沼の歓喜院聖天堂では屋根が黒(松煙墨)チャン塗、奥殿向拝柱掛け鼻彫刻(麒麟、一角)、身舎隅尾垂木(象、蜃)等に桐油彩色の施工例があり、何れも膠による彩色とは違った趣が有ります。

ー左上写真2枚は(公財)文化財建造物保存技術協会 提供 『重要文化財 歓喜院聖天堂保存修理工事報告書(本文編)』よりー

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