社寺建造物に於ける装飾の一つに様々な色で建物を塗り上げていく「彩色」があります。
六世紀の仏教伝来と共に大陸より伝えられた彩色技術は、
単色での塗装期を経て、寺院堂内に極楽浄土を表現すべく、
使用する色数を増し「極彩色」と呼ばれるものに
進化していきました。
描く対象も次第に建物内部から外部へと広がり、
また技術も目覚ましい発展を遂げ、
江戸時代には頂点を迎えます。
施工前
完成見取図
胡粉下地後、中色・上色を加える
完成
文化財における彩色修理の作業は、まず既存状況の調査から始まります。弊社が携わって参りました過去の工事からの膨大な資料と、経験豊富な職人の知識、専門家との話し合いを重ねて修理方針が定められ、下絵(見取図)を起こします。そうして素地に下色を塗り、中色、上色を加え、施工当時の姿を再現していきます。文化財建造物の彩色に用いられている顔料の基本色は、白・黒・赤・青・緑・黄・茶・金と数は少ないですが、配色に補色(色相環で対立上にある色)が多用されることにより、その仕上がりは非常に鮮やかな印象を与えています。 こういった先人の色彩感覚や、題材に込められた教訓・願いと向き合いながら、ひと筆ひと筆を塗り進めております。